相談事例集
相談事例集① 募集情報の的確表示

A社のホームページにエアコンの設置工事の仕事の募集があり、それに応じて業務委託を開始したものの、A社から業務委託の発注者はB社であると報酬の支払いを拒まれた事例(電気工事業・40代)

相談内容

私は、エアコン取付けなどの電気工事の仕事をしています。
大手メーカーの電気工事を請け負っているA社のホームページに、エアコンの設置工事の仕事の募集がありました。私はそれをみて、大手家電量販店から請け負っている会社の仕事なので、安定して受注できるのではないかと思い、A社に応募しました。
A社の社長からは、Bという人物を紹介され、Bと面接するよう指示を受けました。そして、Bと面接した結果、エアコン設置業務を請け負うことになりました。作業手順などの説明は、全てBから受けました。
報酬などの条件もBから口頭で伝えられ、契約書は作ってもらえませんでしたが、実際にお客様のところに作業に行く際の書類などには全てA社の名前が入っていたので、私はA社と契約しており、BはA社の担当者なのだと考えていました。
仕事を始めたしばらくの間は、報酬は約束どおりに支払ってもらえていましたが、振り込みの名義はなぜかBの名義で振り込まれていました。
ところが、1年ほどすると、支払期日に報酬の支払いがされなくなりました。私は、Bに問い合わせたところ、Bから「すぐに振り込む」と言われましたが支払いはなく、その後Bとは全く連絡が取れなくなりました。そのため、私は、A社社長に問い合わせしたところ、私の契約相手はBであってA社ではない。A社は、Bに委託しており、私はB社と契約していることになっているはずだ。A社はBに既に委託料を支払っているので、Bから支払いを受けるようにと説明してきました。
しかし、A社の募集広告には、A社が募集していると記載されており、これまで一度も、Bから仕事を請けるとは説明されていません。私は、A社は大手家電量販店から業務を請け負っているという募集広告をみて応募したのであり、発注者がBであったと知っていれば、この仕事を請けることはありませんでした。
A社に対して未払い報酬の支払いを請求することはできないでしょうか?

回答内容

相談者の契約当事者は誰かが問題となった事案です。
仕事を請けた際に契約書を作成していれば、契約当事者は誰かが明確になっていたはずですが、本件では契約書を作成せず、あいまいなまま作業をはじめてしまったことにもトラブルの原因があります。
また、A社の募集広告にも、A社からの業務委託であると表示してあることにも問題があります。この相談事例は、フリーランス法が施行される前の事例ですが、フリーランス法では、広告等により募集情報を提供するときは、当該募集情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならないことになっています(フリーランス法第 12 条第1項)。フリーランス法の指針でも、意図して実際に業務委託を行う事業者とは別の事業者の名称で業務委託に係る募集を行う場合は、「虚偽の表示」に該当し、虚偽の表示でなくとも、一般的・客観的に誤解を生じさせるものは「誤解を生じさせる表示」であるとの説明がなされています。
この事例で、仮に契約当事者がBであったとしても、A社の募集には問題がある事案であったといえます。
もっとも、実際の報酬の振り込みがBからなされていたことは、契約当事者はBであったことを推認させるような事情がありますが、業務を発注する際の書類や、担当者の言動などを総合的に考慮して契約当事者は誰だったのかを確定することになります。
相談事例では、Bとは連絡が取れなくなっていることや、A社の募集広告の記載には発注者が誰かを誤認させる表示があったことは明らかになっていること、訴訟で契約当事者は誰かという点から立証しながら報酬の支払いを求めることは大変な労力がかかることから、フリーランス・トラブル110番の和解あっせん手続きを選択し、話しあいの結果、A社から一定程度の解決金を支払ってもらうことにより解決することができました。

ポイント

業務を受託する際に、直ちに発注書や契約書などで取引条件を明示していれば、発注者は誰かを作業開始前に確定することができ、トラブルを防ぐことができた事案といえます。また、A社の募集広告にも誤解をさせる表示があったことは広告の記載から明らかな事案であったことから、フリーランス法が施行されてからは、フリーランス法が定める発注者の募集情報の的確表示義務に違反する事案であったといえます。
フリーランス法が施行されてからは、フリーランスに誤解を生じさせる募集広告は禁止されています(フリーランス法第12条)。そして、発注者には取引条件を書面等により明示する義務があります(フリーランス法第3条)。そのため、実際の契約内容と募集広告との内容が異なっている場合には発注者に確認したり、受託するフリーランスの側からも発注者に取引条件の明示を求めたりするなどして、トラブルを未然に防ぐことに努める必要があるでしょう。

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