期間途中で契約解除をしたことを理由に、報酬全額の支払いを拒まれた事案 (システムエンジニア・40代)
相談内容
私はフリーランスのシステムエンジニアをしています。
発注者から、発注者が販売するシステムの開発のサポート業務を委託され、求められる業務の内容と報酬額を定めました。契約期間は3か月でした。
ところが、仕事を始めてみると、発注者の業務責任者の指示が不適切で私がどのように稼働すればよいかわからないことも多かったり、ハラスメントと感じる言動も多くあったりしたため、1か月の稼働時間の4分の3を行った時点で、私から契約解除を申し入れました。
しかし、発注者からは、「契約期間の途中で仕事をやめるのだから、報酬は一切支払わない」といわれています。
契約期間の途中で解除を申し入れはしましたが、それまでは発注者の求める業務を行い、納品した成果物もあり、何も業務をしなかったわけではありません。これまでに仕事をした分の報酬は支払ってもらえないのでしょうか?

回答内容
フリーランスに求められた業務の内容が、一定の事務処理を行うことを目的とした業務委託契約の場合、民法上は準委任契約に該当します(民法第656条、第643条)。その事務処理の成果によって報酬酬が成果に対して支払われる場合には、完成した割合に応じて、報酬を請求することができます(民法第648条の2第2項)。
契約期間の途中で、契約を解除することになりましたが、働いた分の報酬を請求することは可能です。この報酬を発注者から支払ってもらうためには、民事訴訟を提訴することも検討しましたが、相手方とは話し合いができそうな様子だったので、フリーランス・トラブル110番の和解あっせん手続きを申立て、話し合いにより、発注者に一定の解決金を支払ってもらうことで解決できました。

ポイント
システム開発などのシステムエンジニアの業務には、仕事の完成を目的とした請負契約に該当する場合(民法第632条)と、成果物の納品など仕事の完成ではなく、一定の事務処理を行うことを目的とした準委任契約の場合があります。
準委任契約(民法第656条、第643条)で報酬が成果に対して支払われる場合には、完成した割合に応じて、報酬を請求することができます(民法第648条の2第2項)。成果ではなく業務にあてた時間数に応じて報酬が決まる場合でも、これまで稼働した時間に対応した報酬を請求することはできます(民法648条3項2号)。
なお、請負契約の場合、仕事の完成前に契約が解除されたときは、フリーランスがすでにした仕事の結果のうち、可分な部分の給付によって発注者が利益を受けていたときは、フリーランスは、発注者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができます(民法第634条)。
このように契約の途中で解除することになった場合でも、これまでに稼働した部分について報酬が請求できる場合があるので、解除されることになった事情や、契約の性質を整理して対応することが必要です。そのためにも業務委託契約を受ける際には、求められる給付の内容やどのような場合に報酬が支払われるのかをしっかり契約で定めておく必要があります。
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